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誰より優しかったあなた:“彼女”の怒り


さて、次は……“彼女”(アフティ)の話をしましょうか。


その人はなんて名前なの?


私たちマギサは、その人をただ“彼女”と読んでいるの。何故なら、本当の名前は永遠に失われてしまったから。


悲しみから愛情が生まれ、感謝と共に語り継がれているのが、ユフィラの物語なら……優しさから憎しみが生まれ、悲しみと共に忘れ去られていったのが“彼女”の物語ね。


さっきとは違って、暗くて、やるせないお話になるわ。でも、ちゃんと聞いてほしいの。


うん。私、しっかり聞いて、覚えておくよ。


ありがとう、テトさん。


……“彼女”が生まれたのは、ユフィラよりもっと後、エルゴの脅威が世界を脅かし始めた頃。けれど、まだイリスとマギサが手を取り合って、共に生きていた時代よ。


彼女”は誰よりも生意気で、自信に溢れ、負けず嫌いで……けれど気高くて、優しい魔女だった。


最初のエルゴが異端審問官によって討伐されたときも、傍らで魔法を使い戦ったと言われているわ。


エルゴと戦ったの!? その人、ものすごく強かったんだね……!


彼女が歴代で最強の魔女だったと言うマギサも多いわ。今となっては、真相を確かめようもないけれど……でも、彼女が最期の魔法に至った、唯一の赤の魔女だったのは事実ね。


最期の魔法……それは、いつ使ったの? エルゴを倒すとき?


いいえ…………“彼女”の無二の親友『微笑みの魔女』エイミアが殺されたときよ。


え……