白魔女の旅
ランジェさん、ほら、おかゆ! ふーっ、ふーっ!
大丈夫よ。一人でも食べられるわ。
ダメ! 絶対安静!
もう、テトさんったら心配性なんだから……。でも、そんな風に誰かを助けられるのはとてもいいことね。親切心はテトさんの将来の旅を素敵なものにしてくれるはずよ。
へへ……そうかな……? あっ、そういえば、ランジェさんって外の世界を旅したことってあるの?
ええ、あるわよ。テトさんくらいの歳にはもう外に出ていたわね。
本当!? じゃあ、深い森の奥を探検したり、箒で夜空を飛んだり、悪者をどっかーんってやっつけたりしたことあるの!?
もちろん。私も、友達と一緒に世界のいろいろな場所を見てきたわ。
安全なところ、危険なところ。静かなところ、賑やかなところ。それから、醜いところ、美しいところ……。本当に、あちこち旅してきたの。今となってはいい思い出ね。
いいな~~! ペルカさんとも大勢お友達になったんでしょ!
…………。
ランジェさん?
テトさん、これだけは覚えておいて。私たちはペルカさんと言葉を交わすこともできるし、仲良くなることだってできるわ。
でも、白魔女として旅をする以上、いつか必ずお別れをしないといけないの。思い出も、あたたかな家も、優しい家族も、皆置いていかないといけない。彼らと友達になるのは……。
大丈夫だよ! だって、ランジェさんとペルカさんは今でも友達なんだから!
遠くにいたって、もう会えなくたって、心が一緒なら友達だもん! お父さんとお母さんのところを離れたって、家族じゃなくなったりしないのと同じだよ!
テトさん…………そうね。怪我をして弱気になってたみたい。本当に、テトさんの言うとおりよ。
えへへ。それに、前にランジェさんが言ってた工房魔法って、沢山アステールを使うんでしょ? それって、イリスさんたちの助けがないと工房を立派にできないってことだと思うんだ。
その通りよ。彼らの気持ち……アステールで成長させた工房と一緒に旅をするということは、テトさんの言うように、彼らの心と一緒に旅をしていることになるのかもしれないわね。
素敵〜〜っ! わたしも早く工房と一緒に旅がしたいな〜〜!
ふふ、焦っちゃダメよ。今の気持ちを忘れずにいたら、きっとすぐその時はやってくるわ。